ありがたいことに時折パース制作のお仕事を頂くのですが、その際に「建築パース」の言葉の使われ方が気になることがあります。
「パース風にしてほしい」という依頼を受けたものの、そもそもオリジナルで頂くものがパースになっている時も少なくなく、「パース」の意味が時折分からなくなることも。。
この記事では「建築パース」とはなにかという初歩的な疑問に答えていきたいと思います。また、パースを作るメリットについても解説します。
建築パースとは?
「建築パース」とはなんでしょうか。ここでは定義と、パースのいくつかの種類に分けて解説します。
「建築パース」の定義
パース(建築で使われることが多いので「建築パース」と呼ぶことも多いようです。)はPerspective Drawing(透視図)の略で、建物などを立体的に表現する図法のことを指します。
つまりパースといった時には「パース図」のことを言っています。
一般的にパースとだけいうと「立体的な建築の絵」くらいの認識の方が多いような気がしますが、パースは極めて厳密な図法に基づきます。
詳細はここでは割愛しますが、図のように建物の外形の線を結ぶと、ある点(消失点)に収束すること、そしてその高さがアイレベル(見ている人の目の位置もしくはカメラの位置)になることが大きな特徴です。
ただ実際は内装のイメージをするため等の完成予想図と似た意味合いで使われていることもしばしばなようです。
パースの分類 -表現手法-
またパースは主に表現によって二つに分かれます。
- 手書きパース
- CGパース
順番に見ていきましょう。
手書きパース

引用:http://www.rikcorp.jp/contents/pers02/
手書きパースは文字通り、手書きでの透視図のことを指します(ソフトなどを使って手書きのような仕上げにしたものを手書き”風”パースなどと呼んで区別します)。
昔ながらの透視図と言えますが、現在でもCGパースをあえて使わず手書きにしたり、CGを手書き風にしたりと表現手法として好む人が多いです。
着彩の方法だけでもコピック、色鉛筆、パステルなど様々で、表現手法が豊富なのもメリットです。
一方で、一度作成するとやり直しが難しいため、パース制作の途中でのお客様の要望に柔軟に対応するのが難しいというデメリットもあります。
CGパース

引用:https://evermotion.org/files/tutorials_content/uploads/1_AE_05_PP_nr_2686.jpg
CGパースは手書きパースとは逆にパソコンで専用のソフトウェアを使って製作する透視図です。当サイトはこのCGパースをテーマにしています。
手書きよりもより実物に近いフォトリアルな(写真のような)表現ができるのが魅力で、完成予想図やイメージ画像などによく用いられます。
CGパースの作られ方についてはこちらで解説しています。↓

パースの分類 -被写体-
さらにパースは描く対象によっても大きく二つに分かれます。
- 外観パース
- 内観パース
順番に見ていきましょう。
外観パース

外観パースの例 by Atsushi Onoe
外観パースは文字通り、建物の外観の透視図のことを指します。
建築物のかっこよさ・美しさをわかりやすく表すので、建物の完成予想図等でなじみがあるかと思います。
他にも周辺の景観や建物、またそこを利用する人との関係性を視覚的に表現することが一般的で、コンペなどでもキービジュアルとして機能します。
また余談ですが、アイレベル(建物を見る目線の位置)が高い位置にある鳥瞰パース、低い位置にある虫瞰パースなど呼び方に区別があるケースもあります。
内観パース

内観パースの例 by ミライハイマ
内観パースは逆に内観を表現したパースです。
こちらはインテリア等の配置や空間内部の雰囲気を描いたものになります。
パースの作り方に関して言うと、内観パースと外観パースでは照明やスケール感が大きく異なるため、作り方にも違いがあると言えます。
その他の図法
では立体的に表現する建築の図法はパースだけかというとそんなこともありません。

引用:https://esw-japan.com/image/14.html
代表的な建築でよく使われる図法にアイソメトリック(isometric)(以下アイソメ)というものがあります。
公告などでもよく見かけることがありますね。各階の平面の構成を表すときなどプレゼンテーションで好んで用いられる表現手法です。
消失点がなく、線が平行に描かれるという点がパースと大きく違います。
ちなみによく似た図法にアクソノメトリック(axonometric)(以下アクソノ)があります。
両者は混同して使用されることもしばしばですが、厳密にいえばアクソノはアイソメの一種で、平面の図形の構成する角度を90°で固定したものを指します。このあたりの違いはさほど重要ではありませんが、覚えておくとふとした時に自慢できるかもしれません。
パースを作るメリット
目的や用途に応じて差がありますが、クライアントにとって、パースを作成することには以下のようなメリットがあります。
頭の中のイメージを視覚化できる
図面を使ったコミュニケーションだと、特に建築関係でない人にとってはどんな建物かイメージしづらい、といった問題が発生します。
なんとなくイメージはできても、雰囲気やディテールはイメージなしには伝えるのが難しいと言えます。
パースなどの形で、出来上がったイメージをもとにコミュニケーションを行うことで希望の形に近づけることができます。
特に建築のリテラシーを持たない人でもイメージがあると議論がしやすかったりという点は図面にはない大きなメリットといえるでしょう。
訴求の効果が高まる
これは主に広告などの目的で使用する際のメリットです。例えば不動産広告では、「この建物魅力的だな」と感じるかどうかは、完成予想図がどれだけ魅力的かに大きく依存します。
単純に美しく仕上げてほしい等のニーズもある一方で、その見せ方や訴求したいポイント・雰囲気を強調したいケースもあるでしょう。
そうした際にパースは効果的に働きます。CGパースをあえて模型風にしてみたりということも可能です。
逆に言えば、訴求効果を狙ったパースの制作の依頼では、そうした魅力あるパースを制作できる業者か、依頼側の意図を汲んで反映してもらえるかを選定の基準にするといいでしょう。
単純にポートフォリオのパースの美しさだけではなく、コミュニケーションの質でも業者の間で大きな差があると言えます。
モチベーションが高まる
副次的な要素ではありますが、完成予想図があるとオープンや売り出しに向けた準備に向けてモチベーションが高まります。
大勢のチームで準備を行うときにはこうした魅力的なパースが一枚あるだけでも大きな差になるはずです。
まとめ
この記事では「建築パース」とは何か?について解説しました。
「建築パース」とひとことで言っても様々なものがあり、それぞれに魅力があります。
パースの注文にあたっては、こうした違いも知ったうえで、「パースってどんなものがあるのかな?」と調べてみて、気に入ったテイストのものを提示してみるとスムーズにコミュニケーションができるかと思います。
「じゃあ実際パースってどうやって作るんだろう?」
そう思った方は、パースの制作についてはパースの実務者の方へのインタビューが参考になるかと思います。下のリンクも参考にしてみてください。

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