パースの実務については特に学生だとあまりよくわからないことも多いと思います。
今回は実際にパースの実務を行っている尾上様にインタビューを行い、CGパースの作り方や、制作の流れ・時間などについて伺いました。

尾上様、よろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします!。
Q1.建築CGパースの作成ソフト・作成手順

どのようなソフトを使い、どのような手順で実際CGパースを作っていますか?

3dsMaxで3Ⅾモデルを立ち上げ、V-rayを用いてレンダリング、最後にPhotoshopで調整します。
3dsMaxの操作画面 by Atsushi Onoe
A:依頼をいただいてから3dsMaxというソフトで3Ⅾモデルを立ち上げ、プラグインであるV-rayというレンダラーを用いてレンダリングをします。
植栽や背景なども含めてすべてレンダリングで済ませてから、最後にAdobe Photoshopで人間を合成し、明るさやコントラストの調整をします。
建築CGの制作には様々な工程がありますが、おおよそ次のように分けることが出来ます。
- 下準備
- モデリング
- マテリアル・テクスチャー作成
- レンダリング
- Photoshopによる仕上げ
(詳しい作業工程は今後のチュートリアル記事を参考にしてみてください)
学生の方からすると、工程が多くとてもタイトなスケジュールの中では出来っこないと思われるかもしれません。
慣れの問題でもありますが、最終提出を見越してできることから始めるだけでも随分と楽になります。もちろんこれは実務でも一緒です。
Q2.パースのスタイル

普段どのようなCGパースを作っていますか?

基本的にはリアルなものを、依頼者様に合わせて様々なスタイルのパースを制作します。
基本的にはできるだけリアルに近いものを制作します。
そのほかに依頼主様(とくに学生の方)の好みに応じて変わったスタイルのものを作ります。
依頼を受けて作るものは基本的に次のようなリアルなものが多いです。
かっこいいものを要望とする方よりもきれいなものを求めてる方が多いので、シンプルな素材感のものを目指します。
リアルなCGパース例1 by Kazuaki Tamura
リアルなCGパース例2 by Atsushi Onoe
一方で学生の方から依頼を受ける場合もあり、その場合は丁寧にお話を聞きながら作業します。特にこの場合、レンダリングよりもそのあとのPhotoshopの工程が重要になります。場合によってはモデリングも通常に比べてシンプルにして細部を作りこまないようにもします。
シンプルなCGパース例1 by Hyuga Arashi
シンプルなCGパース例2 by Takuma Shiozaki
もう一つ他社様であまりやられていないものが模型風のレンダリングです。このレンダリングは、白を基調として構造をきれいに見せるような場合にちょうど良いと考えています。特にコロナ渦で模型をたくさん作れないという学生の方の意見を聞いて思いつきました。
模型風のレンダリング例1 by Atsushi Onoe
模型風のレンダリング例2 by Atsushi Onoe
Q3.CGパースのメリット

手書きのパースもあります。CGパースのメリットは何ですか?

細かい素材感を出せることと、それが比較的短時間でできることです。
一方で、究極的なことを言ってしまえば、手書きかCGかという選択肢は施主様や設計士の方の好みでしかないと僕は思っています。
CG以前は手書きのパースを用意するか建築模型を施主様に見せていたわけですが、それでも傑作と呼ばれる建築が生まれてきたわけです。加えて、CGが使われ始めた当初はむしろ手書きのほうがより現実に近い雰囲気を見せることが出来ていました。
それが技術の進歩によってよりリアルなパースを描くことが出来るようになりました。その技術が映画などでも使われるようになり一般の方にも認知してもらえるようになった結果、施主様もそうしたリアルな表現に興味を持ち、好むようになったのだと思います。
by Kazuaki Tamura
そのうえであえてCGのメリットを考えると、それはやはりリアルな空間を誰もが短時間で作れることにあると思います。
加えて、昨今では施主様との行き違いを避けることにも役立ちます。建築CGがリアルであればリアルであるほど施主様と「画像と全然違うじゃないか」というようにもめることも少なくなると考えています。
by Atsushi Ono
Q4.CGパース制作で参考にしているもの

パース制作にあたり、参考にしているものはありますか?

海外の建築パースを制作している方のサイトを参考にしています。
海外の建築パースのリアルさやカッコよさにあこがれて本格的にCGを始めたこともありソースは基本的に海外、特にヨーロッパを中心にして探します。
始めに、参考にする建築CGはInstagramで建築パースを手掛けている事務所を探し、アカウントをフォローするなどしています。
特に決まった事務所のアカウントを見るというよりは、様々なものをランダムに見ていろんなバリエーションがあることを知り、いろんな要望に対応できるようにしております。
この時に注意してみているのは①建物をどのように見せているか(構図)、②どのように光を表現しているかの二点です。加えてどういった雰囲気を出しているかも見ます。というのも、リアルな中でもPhotoshopなどを用いて様々な雰囲気を出すことが出来るので、観察してどうしたらできるかを考えます。
PONNIE Images, https://www.instagram.com/ponnieimages/
MIR, https://www.mir.no/
またCGに限らず絵画も参考にします。必ずしも建物をメインに描いたものではなく、風景画や抽象画などいろんなものを参考にします。CGパースも「絵」だと思いますし、構図に限らず色使いなどの参考にもしています。
建築学生へのメッセージ

最後にこれから建築CGパースを勉強しようとしている読者の方にエールをお願いします!

建築パースの作成は設計にも役に立ちます!
建築CGの技術を習得するのは非常に時間がかかりますが、自分が魅力的だと思う空間を表現する幅を大きく広げることが出来ます。
また、ソフトの使い方をマスターすれば新しい表現にチャレンジすることもできます。将来建築パースで生計をたてるつもりがなかったとしても、その経験は自身が設計してプレゼンをするのにも役立ちます。
建築パースをつくるということ自体、あるいはそれについて考えることは建築を設計するうえでとても重要なことだと僕は思うので、ここまで読んでいただいたこの機会にぜひ一度チャレンジしてみてください!

インタビューへのご協力ありがとうございました!!今後も尾上様にはチュートリアルの記事を執筆いただく予定です!
実務者プロフィール
Petit Tomato Visualization 尾上篤(おのえ あつし)様
スイスを拠点に建築を学ぶ傍らでフリーランスとして建築CGパースを制作する。
パース制作のご依頼はこちら
2021.09 – ルガーノ大学 メンドリジオ建築アカデミー(スイス)
2019.10 – 2020.09 Stücheli Architekten Zürich 研修生(スイス)
2019.04 – 2021.07 京都工芸繊維大学 大学院 建築学専攻 (中退)
2015.04 – 2019.03 京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン・建築学課程 建築課題コース
コメント