パースの実務については特に学生だとあまりよくわからないことも多いと思います。
今回は実際にパースの実務を行っているA DESIGNさんにインタビューを行い、CGパースの作り方や、制作の流れ・時間などについて伺いました。

A DESIGNさん、よろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします!
Q1.建築CGパースの作成ソフト・作成手順

どのようなソフトを使い、どのような手順で実際CGパースを作っていますか?

Blender・SubstancePainter・UnrealEngine5などですね。
A1. 4つの段階に分けてパース作成を行います。
1.図面・写真から3Dモデリングを作成 (Blender)
Blenderを使用してモデリングしていきます。全体構図において、小さいものや遠くのものは詳細にモデリングしても人間の目には判断つかないので、全体イメージを重視してモデリングを進めていきます。
また、Blenderにはアセット機能が追加されたので、家具や過去に詳細にモデリングしたもの、無料で手に入る素材などは登録しておき、ドラック&ドロップでモデルを追加して時間を短縮しています。
2.UV展開、UVの整理
3つの目の工程のためにテクスチャ作業の準備をしていきます。
UV展開をする前に、私は不要な面(アングルから映ることの場所)は削除しています。
例えば、床や天井、壁との設置面は最終的な書き出しには影響しないので削除し、UVを節約します。
これにより見える場所のテクスチャを大きく確保することができるので、仕上がりが綺麗になります。
UV展開時に気を付けておきたいのが、回転・スケールの適用(適用したいメッシュを選択してCtrl+A)です。これを失念するとモデリングのサイズと違うUVになってしまうので適用させておきます。
また、面の向きも直しておきます。テクスチャを付けるソフトにデータを持っていく際、面の向きが反対だとうまく認識してくれません。
「ビューポートオーバーレイ」→「面の向き」にチェックを入れて赤表示があれば面の向きを修正しておきます。

不要な面を削除

面の向きを修正
3.モデリングしたものに素材(テクスチャ)を付ける (SubstancePainter)
SubstancePainter(以降SP)はテクスチャを付けるのに非常に強力なツールです。
建築素材であれば、Substance Sourceで提供されている11,000以上もの中から、イメージに近いものを選ぶだけでとても美しいテクスチャを簡単に付けることができます。
また、自分で細かな設定をすることが可能なので、よごれ、色のムラ、溝や傷、錆など物体の質感をグッと高めることができます。
BlenderとSPとのデータ受け渡しはaddonを利用します。
初期設定は面倒ですが、こちらを使うことでFBXなどに書き出しすることなくBlenderからSPにワンクリックでデータを渡せます。
また、SPでテクスチャを付けた後、Blenderに対してもワンクリックでマテリアル設定までしてくれます。

ノードに対して、自動でテクスチャ画像をつなげてくれます
ただし、最近はUnrealEngine5(以降UE5)がリリースされ、Lumen・Naniteという機能が加わったことで、最終書き出しをUE5で行うことにしました。
UE5にも”Megascans”という無料で利用できるモデル・アセットが大量にあります。それを利用してテクスチャ設定することができるので、SPとUE5どちらでテクスチャを作りこむか先に検討してからテクスチャの工程を行ってます。

ドラック&ドロップでマテリアルが簡単作成
4.レンダリング(UnrealEngine5)
初めにBlenderファイルをUE5にドラッグ&ドロップします(※UE5にaddonが必要になります)。
次に各モデルにマテリアルを設定していきます。
前述の通り、SPで作成したテクスチャは自分でノード設定を行います。UE5でのテクスチャはMegaScansからマテリアルをダウンロードして使用します。
UE5はリアルタイムでレンダリング画質を確認しながら作業できるので、ライティング・構図を決めるのが非常に楽です。
また、PostProcessという機能があり、指定した範囲内でカラーコレクションを行うことができます。
この機能はカメラそれぞれでも設定できるので、複数カット書き出しする際、カメラアングルによってカメラの絞り、露出、光の強さなど細かな設定ができ非常に重宝してます。
植栽や情報の追加もMegaScanから必要なものをダウンロードして追加していきます。
各設定が終わったらレンダリングします。UE5はレンダリングスピードが驚くほど速いので、静止画パースだけでなく、動画での書き出しも可能です。

リアルタイムで構図・ライティングを決めます

※植栽や色々な情報を追加してよりリアルになるように仕上げます

夕方、夜景なども数値を変更するだけで簡単に作ることができます
Q2.パースの完成度を高めるために(他社様と比べ)特にこだわっている点を教えてください。

こだわりポイントを教えてください。

お客様に求められるイメージになるよう工夫をしています。
A2.パースの良い所は、画像を通してお互いのイメージを共有できるところだと思っています。
お客様からの要望、イメージを大切にして、求めている絵・動画になるよう構図・ライティングに力をいれ、修正をしながら完成イメージを作り上げるように心がけています。

白を基調にした女性会員のリラクゼーションルーム
Q3.CGパース制作で参考にしているもの

CGパースの制作で参考にしているものを教えてください。

PinterestとArtStationです。
A3.PinterestとArtStationで他の方の作品を参考にしてます
Pinterestは自分好みのものを見つけると、似た作品を自動で表示してくれるのでリファレンスとして時間があるときに見てます。
ArtStationは実際に作られた作品を見ることができるので構図や絵の見せ方などを勉強させていただきながらも、同じ3D技術を使ってここまでできるのか!とやる気も一緒にいただいております。
Q4.これからCGパースを始める方に対するアドバイスやメッセージ(自分が初心者に戻ったとしたときに)

これからCGパースを始める方に対するアドバイスやメッセージがあれば教えてください。

Blenderは無料なのでおすすめです!
A4.Blenderは無料なので、まずは初めてみて、わからないことはYoutubeで調べて好きな作品から作るのが良いと思います。
Blenderしかモデリングソフトの経験がないので、操作が簡単・難しいは正直比べてお答えできません。
私自身は独学でYoutubeを見ながら学び、現在のワークフローにたどり着くまでにも様々な方法を試してみました。
ワークフロー自体もこれが正解とは限りませんが、この記事で、これからはじめられる方の参考になれば幸いです。

インタビューへのご協力ありがとうございました!!
実務者プロフィール
A DESIGN 様
お客様のご要望に併せて、様々なパース・動画作成も請け負っております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
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