パースの実務については特に学生だとあまりよくわからないことも多いと思います。
今回は実際にRhinoceros, V-rayを使ってパースの実務を行っているArchitecture Photo Studio様にインタビューを行い、CGパースの作り方や、制作の流れ・時間などについて伺いました。

Architecture Photo Studio様、よろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします!
Q1.建築CGパースの作成ソフト・作成手順

どのようなソフトを使い、どのような手順で実際CGパースを作っていますか?

図面作成にAutoCAD、モデリングにはRhinoseros、レンダリングにV-ray、レタッチにPhotoshopを使用しています。
A. 大きく分けて、4つの段階を経てパース作成を行います。
- 図面作成(AutoCAD)
- モデリング(Rhinoceros)
- レンダリング(V-ray)
- 画像編集(Photoshop)
図面作成
まず図面作成についてです。この作業が以降の作業のクオリティを左右する工程ですので時間をかけておこないます。
並行してスケッチでイメージを確認しながら、表現するイメージが現実的になるように作成を行います。ここで私が意識をしている点は、以下の二点です。
- 自分がこの空間の中に入ったときに使い勝手がよいか
- その場所は居心地は良いものになっているか
モデリング
次にモデリングです。モデリングにはRhinoserosを用いています。
ソフトウェアの進化もあり、様々な3D作成ソフトウェアが存在していますが、私はRhinocerosが気に入っています。
理由としては次の工程で説明するV-rayというレンダリングソフトとの相性がとても良いこと、パラメトリックな表現が容易なことが挙げられます。その他お客様のニーズに合わせて多種多様な設定ができる点も魅力ですね。
建築学生さんへおすすめできるソフトでもありますので意匠性、表現力を磨きたい方はぜひ一度調べてみて欲しいです。参考に私がRhinoで作成した一例を載せさせていただきます。

Rhinoceros作成例
Rhinocerosでの制作例
ここから実際のパース作成における3D作成についてご説明させていただきます。3D作成における工程は以下の通りです。
- 図面のインポート
- レイヤー分け
- ボリュームの立ち上げ(床、壁、天井、柱、梁)
- ディテールの作成
- パースを作成するアングルの位置決め
- ライティングの配置・調整
図面をインポートしボリュームを立ち上げる前にレイヤーを設定します。レイヤーの設定を行わないと3D作成では様々なオブジェクトを作成しますので後半にごちゃごちゃして作業効率が落ちる可能性があります。それを防ぐためにしっかりとレイヤー分けを行います。参考に作成途中のレイヤーのイメージを掲載します。
Rhinocerosのレイヤー分け
レイヤーには親レイヤとその直下に属する子レイヤーがあります。このあたりの設定は各々で好みがあると思いますので、自分なりのルール決めるようにしておくとよいと思います。
私の場合は大きく①躯体部分、②仕上げを含むディテール、③ライティング、④ランドスケープに分けて設定をしています。このレイヤー分けはモデリングに限らず、後半のレンダリングで設定するマテリアル割り振りにも使用するのでとても大切なものです。
ボリュームを立ち上げて詳細の作成ができたらパースを作成するアングル決めをおこないます。Rhinoでは「Namedview」というコマンドで今表示されている画面の位置を保存することができます。アングルを保存する時に気を付けることはカメラを上下左右に振らないことです。
パースという言葉は「Perspective」=一点透視図法ですので、消失点(Vanishing point)が存在します。この点が画面の中心にくるようにすることが大切だと考えています。ここを意識するだけでパースのクオリティが上がります。合わせて目線の高さ(床から1500mm)で設定するとリアリティが増します。ここまで設定するとこのような感じになります。
Rhinocerosでのモデリング
レンダリング
レンダリングについては、V-rayを使っています。ここでは主にマテリアルの作成や割り当て、照明の調整を行います。
日本語に対応していないソフトのため、あまりなじみがない方が多いと思いますが、テクスチャの表現設定を含め細かく設定しやすいのでおすすめできます。
V-rayの設定画面
様々な方のレンダリングを拝見していると、たまにマテリアルのスケール感が作成している空間に合っていないものを見かけることがあります。
マテリアルがよいものでもこのスケールが合っていないとリアリティが出ません。上手く表現できなくて悩んでいる方は一度設定を見直してみると良くなると思いますので確認してみてください。
画像編集
最後に、画像編集です。私はPhotoshopを使用してします。
レンダリング後のパースには最小限の修正で済むようにしています。しっかりとレンダリングの設定ができていればほとんど修正する必要はないと考えています。私の場合は主にレンダリングに使用するマテリアルの修正に使用していますね。最後になりますがここまで工程をすべて完了したパースをいくつか載せさせていただきます。
Q2.パースへのこだわり

パースの完成度を高めるために(他社様と比べ)特にこだわっている点を教えてください。

マテリアルのテクスチャとライティングにこだわりを持っています。
A:マテリアルのテクスチャとライティング、この二つの要素はレンダリングをする上で欠かせない要素であると同時に両方が上手く表現できないと良いパースにならないと考えています。
例えば壁の仕上げがモルタルだと仮定して、上手くテクスチャをマテリアルで表現できたとします。しかし、ライティングが上手くいかないとせっかく上手く設定できたテクスチャが伝わらないパースになってしまいます。マテリアルは、基本の画像の他にPhotoshop等を使って独自でマテリアルを作成・調整をしています。
ライティングでは部屋の用途に合わせた調整はもちろんのこと、照度、色温度含めて細かく設定をして検証するようにしています。使用するマテリアルによって反射率が変わってきますので、このあたりの設定はパースごとに変わってきますね。
Q3.CGパース制作で参考にしているもの

CGパースの制作で参考にしているものを教えてください。

海外のサイトをよく参考にします。
A:レンダリングの技術レベルは個人的な意見ですが、海外の方が圧倒的に高いと感じます。
その中でも私が良く参考にしているのは以下の二つです。
アングルや表現技法のとても良い参考になります。
Q4.これからCGパースを始める方へのアドバイスやメッセージ

これからCGパースを始める方に対するアドバイスやメッセージがあれば教えてください。

日々の勉強につきますが、熟練している方にアドバイスを聞くのも有効です。
A:私自身もともと全く違う業界にいました。独学と仕事の実務で必死に学習して今の表現技法を身につけました。
何事もそうですが、最初が一番難しく時間がかかるものです、時間が惜しい方は使える方にアドバイスを求めて積極的に学習することが効果的だと思います。私でもよければアドバイスさせていただきますので気軽にご連絡ください。
数年前に比べてさまざまなソフトの性能が上がったと感じます。以前に比べて表現の幅が広がったと感じる一方、設定できる項目が多くなり私自身も日々勉強しています笑。その分、使えるようになると表現力が大きく増えますので興味がある方はまずは初めてみることが大切だと思います!多くのソフトが無料体験版を用意しているので気軽にソフトに触れることできます。

インタビューへのご協力ありがとうございました!
実務者プロフィール
Architecture Photo Studio 柴田 皓貴(しばた こうき) 様
フリーランスで、高クオリティ建築パースを制作しております。
商業施設や住宅など、さまざまなシーンのお仕事を引き受けさせていただいております。パース制作のご依頼はこちら
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